下ばかり向いて歩くので 予想外のものを見つけてたじろぐことがある 妙に心に引っかかるもの その場を立ち去りがたくなるものを見つけた時 ひょいと拾って持って帰ってしまう そのせいでがらくたが増えていく 中でも特に数が溜まってきたものがあって それは「お守り」である 交通祈願、安産、縁結び、えんぎり 厄除、方除、恋、神璽、御守護などと 様々な文字、様々な意匠があって飽きない これらを拾うことで自分の行末が変わるとか 人の運命を背負いこんだり なんらかの厄を引き受けてしまうとか そういった考えは持っていない ただ、たとえばこの世のすべてが死に絶えて 世界中のあらゆる場所が暗闇に包まれた時 このお守りたちによって そこだけほのかな明るさに包まれ 人間のいない空間を示している そんなことを夜更けに考えたりする