蝶が 土にたかり 互いの喉に触れ 青い夢を見せる 幾度もの成熟 生まれ変わりを 軌跡を描き 焦がされている 羽が また地面に落ち 辿りつけない木陰に 終わらない あなたが死んで 永遠が 死んで永遠が 生きながら この喉を 青い夢を見せる 終わらない 羽ばたきが 死んで あなたが 死んで 悲しい
瞳を 置き去りにした 夢見ながら 止まった時を遡り 写真の中で あらわな通せんぼうをしている 視界は遮られ 鼓動は 手遊びのように 雑草のように 刈り取られると ぶら下がった足を揺らし 木陰を作ったかと思えば 緑が覆う 水面に明るく 漂う花を 上手に噛んでみせて 置き場所のない そこで夕方まで あなたは 聴こえる歌を聴いている
淡い音 はなればなれに息 まぎれ 生い茂るものの朝 皺の寄った 星のスカートは どんな夢を見ている? 高空に静止して 流れていかない雲を つかもうとした 夏の花 削り取った窓に 首だけ出して あなたの物語を寿ぐ いつまでも いつまでも 時が声をひそめて この詩が土に 還るまで
鳥の 輪を描くように 腕の中で時計を 守ってほしい 日に細かな気泡の浮かぶ ガラスの器に 首の折れたストローを挿して 二重になった影を 辿ってほしい 絡めた指先から 震えとともに 雨を奏でて しなる帆を 闇の赤に沈める 湾を 終わらせてほしい
指に取った 灰を 目蓋にこすりつけるようにして 受け入れる覚醒を 外光が 青くあなたの胸に入りこむ 胸に幾筋の 線を流して 待っている――待っている 片方だけ裏返ったスリッパは まだ夢を見ていて ドアが 開けられるのを願う 外では 日に暖められたコンクリートに クレマチスが 濡れている
映画が終わり グラスの水滴が流れて 伝わっていく泉に 手を浸す 深夜のこと 頬にスタッフロールは 逆さに雨となり 取り返しのつかない 早回しにも似て 繁茂した 森の奥に隠されている 戸を抜けて やがて幻と 影と溶け合うだろう そっと 水草を揺らす息 忘れながら 夢見ながら
まどろみの 虚ろに耐えている 生物がいると 伝えてくれたこともあり それならばこのようにして 指を浸し 呼び止めるならば 花は花を覆い 応えた面影の数にだけ ゆるく髪を梳かし 蛇行して銀色に光る 唄のように果てへ 続くものの彼方 流れながら 可憐な鱗を落としていく 精が一人 振り向いて言った
水を 拭わずにきた ざわめきの彼方から 萎んだ心臓は 息を送り出し 闇の下生えに隠し やまいは花を 群生は 水かきの張った手で がらんどうの 再生を試みている 伸ばせばそこに 閉じた水面に 透き通った 茎に触れる